京大の山中教授グループがiPS細胞を分化・誘導して別の細胞を作る方法でUS特許を取得 |
下記は時事通信の電子版で5月11日に発信された内容である。
京都大学は11日、体のあらゆる細胞になれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)から
目的の細胞を作製する方法の特許を、米国で取得したことを明らかにした。
研究機関や企業がiPS細胞から分化させた細胞を使用、販売する場合にも権利が及び、
京大は「新薬開発の盛んな米国で特許を取得した意味は大きい」としている。
iPS細胞は京大の山中伸弥教授らが世界で初めて開発した。同大はiPS細胞の
作製方法などについて既に米国で特許を取得。今回はiPS細胞を分化・誘導して別の
細胞を作る方法で特許が認められた。同様の特許は、日本では取得済みという。
新聞各紙の記事については下記のサイトでリンクされていますので照会してください。
http://ameblo.jp/regenerative-kyoto/entry-11248804117.html
上の写真は神戸新聞に掲載された記事です。
また、2012年5月12日7:34頃に放映されたNHKニュースでも同様な報道があった。
下の3枚の写真。
本Blogでは今回USPの特許(2012年3月6日)となった特許の内容とすでにUS特許を
取得した2つの特許の内容について記載します。
(1)今回権利化したUS特許
US特許番号 8,129,187 2012.3.6
特許の題名:Somatic cell reprogramming by retroviral vectors encoding
Oct3/4. Klf4, c-Myc and Sox2
発明者:Yamanaka; Shinya (Kyoto, JP), Takahashi; Kazutoshi (Kyoto, JP),
Okita; Keisuke (Kyoto, JP)
出願人:Kyoto University (Kyoto, JP)
出願番号:12/656,907 (February 18, 2010)
優先権主張:2005-359537 Dec 13, 2005 [JP]
特許の概要:
The present invention relates to a nuclear reprogramming factor having an action of reprogramming a differentiated somatic cell to derive an induced pluripotent stem (iPS) cell. The present invention also relates to the aforementioned iPS cells, methods of generating and maintaining iPS cells, and methods of using iPS cells, including screening and testing methods as well as methods of stem cell therapy. The present invention also relates to somatic cells derived by inducing differentiation of the aforementioned iPS cells.
(2)今回以前に権利化しているUS特許(2件)
1)US特許番号 8,048,999 2011.11.1
特許の題名:Nuclear reprogramming factor 核初期化因子
発明者:Yamanaka; Shinya (Kyoto, JP), Takahashi; Kazutoshi (Kyoto, JP),
Okita; Keisuke (Kyoto, JP)
出願人:Kyoto University (Kyoto, JP)
出願番号:12/086,479 (December 6, 2006 )
優先権主張:2005-359537 Dec 13, 2005 [JP]
特許の概要:
There is provided a nuclear reprogramming factor for a somatic cell, which comprises a gene product of each of the following three kinds of genes:
an Oct family gene, a Klf family gene, and a Myc family gene, as a means
for inducing reprogramming of a differentiated cell to conveniently
and highly reproducibly establish an induced pluripotent stem cell
having pluripotency and growth ability similar to those of ES cells
without using embryo or ES cell.
【要約】
胚やES細胞を利用せずに分化細胞の初期化を誘導し、ES細胞と同様な多能性や
増殖能を有する誘導多能性幹細胞を簡便かつ再現性よく樹立するための手段として、
下記の3種の遺伝子:Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、及びMycファミリー
遺伝子の各遺伝子産物を含む体細胞の核初期化因子が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体細胞の核初期化因子であって、下記の3種類の遺伝子:Octファミリー遺伝子、
Klfファミリー遺伝子、及びMycファミリー遺伝子の各遺伝子産物を含む因子。
【請求項2】
下記の3種の遺伝子:Oct3/4、Klf4、及びc-Mycの各遺伝子産物を含む請求項1に
記載の因子。
【請求項3】
下記の遺伝子:Soxファミリー遺伝子の遺伝子産物をさらに含む請求項1又は2に記載の因子。
【請求項4】
Sox2の遺伝子産物を含む請求項3に記載の因子。
【請求項5】
Mycファミリー遺伝子の遺伝子産物とともに、あるいはMycファミリー遺伝子の遺伝子産物に
換えてサイトカインを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の因子。
【請求項6】
サイトカインがbFGF及び/又はSCFである請求項5に記載の因子。
【請求項7】
下記の遺伝子:TERT遺伝子の遺伝子産物をさらに含む請求項1ないし6のいずれか1項に
記載の因子。
【請求項8】
下記の遺伝子:SV40 Large T antigen、HPV16 E6、HPV16 E7、及びBmi1からなる
群から選ばれる1種以上の遺伝子の遺伝子産物をさらに含む請求項1ないし7のいずれか
1項に記載の因子。
【請求項9】
Fbx15、Nanog、ERas、ECAT15-2、Tcl1、及びβ-cateninからなる群から選ばれる
1種以上の遺伝子の遺伝子産物をさらに含む請求項1ないし8のいずれか1項に記載の因子。
【請求項10】
ECAT1、Esg1、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Sox15、ECAT15-1、Fthl17、Sall4、
Rex1、UTF1、Stella、Stat3、及びGrb2からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の
遺伝子産物をさらに含む請求項1ないし9のいずれか1項に記載の因子。
【請求項11】
体細胞の核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、体細胞に対して
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の核初期化因子を接触させる工程を含む方法。
【請求項12】
体細胞がヒト細胞である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法により得られた誘導多能性幹細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の誘導多能性幹細胞から分化誘導された体細胞。
【請求項15】
細胞の分化能及び/又は増殖能を改善する方法であって、細胞に対して請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の核初期化因子を接触させる工程を含む方法。
【請求項16】
細胞がヒト細胞である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法により得られた細胞。
【請求項18】
請求項17に記載の細胞から分化誘導された体細胞。
WO2007/069666(PCT:JP2006/324881)より
2)US特許番号 8,058,065 2011.11.15
特許の題名:Oct3/4, Klf4, c-Myc and Sox2 produce induced pluripotent stem cells
発明者:Yamanaka; Shinya (Kyoto, JP), Takahashi; Kazutoshi (Kyoto, JP)
出願人:Kyoto University (Kyoto, JP)
出願番号:12/ 457,356 (June 9, 2009 )
優先権主張:2005-359537 Dec 13, 2005 [JP]
特許の概要:
The present invention relates to a nuclear reprogramming factor having an action of reprogramming a differentiated somatic cell to derive an induced
pluripotent stem (iPS) cell. The present invention also relates to the
aforementioned iPS cells, methods of generating and maintaining iPS cells,
and methods of using iPS cells, including screening and testing methods
as well as methods of stem cell therapy. The present invention also
relates to somatic cells derived by inducing differentiation of the
aforementioned iPS cells.
関連サイト
Glis1(グリース・ワン)遺伝子発見by 山中教授の研究グループ iPS細胞治療への道に光明
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京都大学 iPS細胞研究所の紹介
このBlogの中で米ベンチャー企業のアイピエリアン社(iPierian)が国際特許で日本の
研究者よりも先にイギリスの特許を得たことも印象に残った。と書いていますが
京都大学はこの特許を買い取っています。
英国特許番号はGB2450603
iPS使わず神経細胞 米スタンフォード大学マウス実験
iPS細胞 英で米社に特許
京都大学 山中伸弥教授のiPS細胞に関する2特許が登録成立
平成21年11月20日に成立した下記2つの特許に関する記事です。
特開2009-165478(登録特許No.JP4411362)
特開2009-165481(登録特許No. JP4411363)
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