米国コロンビア大学のグループが記憶力低下の原因物質がRbAp48であることを証明 認知症や物忘れに朗報 |
されていました。
内容はhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20130829/k10014116701000.htmlに
アクセスしてください。
本稿では人間の記憶について最近の研究動向と80歳台になると4人に1人が認知症と
物忘れの違いなどについて論じていきます。
まずNHKの報道内容について簡単にレビューしていきます。
(1)ノーベル生理学賞を受賞のエリック・リチャード・カンデル氏(Eric Richard Kandel) 1929年11月7日 - 83歳が率いる米国コロンビア大学の研究グループが
33歳から89歳までの男女18人の脳のうち、記憶に関わる海馬という領域に注目、
詳しく調べました。
RbAp48という遺伝子(たんぱく質)が老化に伴ない減少すること証明
NHKの報道の一部(下の写真)
(2)生後15ヶ月のマウスにRbAp48を投与することで記憶力が生後3ヶ月のマウスと
同じくらいに回復した。
上の写真はNHK報道の一部。
コロンビア大学のエリック・カンデル教授にWikipediaより簡単にプロフィールを
紹介しておきます。
エリック・リチャード・カンデル氏(Eric Richard Kandel)1929年11月7日 -は
2000年に神経系の情報伝達に関する発見の功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞した
神経学者。コロンビア大学生化学教授(1974年~現在)。
アメフラシのニューロンに関係する実験を行い、CREB分子のブロックにより長期記憶の
形成に関連する一連のイベントが起きない事実を発見した。還元主義者としても知られる。
記憶に関する研究でCREBを題材とした研究の競合は激しい。1990年代初頭から
マウス、ハエ、アメフラシを使ったCREBに関する研究が盛んに行われている。
CREBについてもWikipediaより引用しておきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/CREB
CREB (cAMP response element binding protein) とはcAMP応答配列結合タンパク
のことであり、神経細胞ニューロン間の恒久的接続を確立するタンパク質を、
転写・翻訳するのに必要な因子である。この分子をブロックした場合、タンパク質
合成や新たなシナプスの発達が妨げられ、その結果長期記憶の形成が阻害される。
エリック・カンデルはCREBのこの作用をアメフラシを用いて証明した。
CREBの作用は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)によって強化される。そのため、
アルツハイマー病などの治療に役立つと考えられている。しかし人間に用いた場合、
全てが覚えている記憶となり、過去の事に囚われ続け、前に進んでいく能力を見失って
しまうのではないかと指摘される。
また、ラットの実験でカルシニューリンを過剰に発現させた場合、CREBが抑制されて
物事を忘れやすくなることが報告されているため、忘れ薬が流通する可能性が指摘されて
おり、そのような薬を投与すればPTSD症状が無くなるとも言われるが、
ローレン・スレイターは父親によって娘への近親姦的強姦に利用される可能性など
倫理的な問題が多く存在し、実際カンデルなどは研究開発に消極的だとしている
上の写真はエリック・カンデル教授の弁で将来人間にも応用され記憶の改善に役立たせたいと
抱負を述べられています(NHK報道より)
新しい記憶」は脳の海馬に、「古い記憶」は大脳皮質にファイルされることが判っています。
PTSDなど恐怖を伴なった記憶は大脳辺縁系にある扁桃体に貯蔵されることも判っています。
産業技術総合研究所が「脳を理解するための情報源メモ」として平易に纏められています。
下記のサイトで見ることが出来ます。
http://staff.aist.go.jp/y-ichisugi/besom/brain-memo.html
東京農大の
応用生物科学部バイオサイエンス学科 教授 喜田 聡の研究グループもCREBを研究
されており下記のサイトで研究内容を紹介されています。
http://www.nodai.ac.jp/teacher/102190/2011/1.html
Cell誌4月27日号(2012; 149: 693–707)に掲載の記事(下記リンク)も参考になります。
http://www.cell.com/retrieve/pii/S0092867412004060
記憶の長期的保持にエピジェネティクス(遺伝子の可逆的化学修飾によってその発現を制御すること)が関与していることを、お得意のアメフラシを用いた実験で証明したものです。
老化やアルツハイマー病にみられる記憶力の低下の原因の一つには、特にNMDA受容体の
機能不全といわれています。東京都医学総合研究所の宮下知之研究員、齊藤実参事研究員
らは、記憶を長期間維持するために、マグネシウムイオンが、記憶や学習に重要な役割を
もつNMDA受容体の情報伝達経路をブロックしているメカニズムを、ショウジョウバエを
用いて、世界で初めて明らかにしました。
(首都大学東京、東京薬科大学との共同研究)
2008年10月の文芸春秋 Page324-333で八千代病院の川畑信也先生の著述に
認知症と物忘れについて興味深いまとめをされていましたのでそれについても紹介
しておきます。
上の表が年齢に伴なう心配のいらない物忘れと認知症に見られる物忘れの違いが
まとめられています。