クローズアップ現代「夢の治療が始まった~免疫を制御する“医療革命”~」 を視聴して |
副題で「免疫を制御する“医療革命”」を視聴しました。
「自己」と「他者」を巧みに見分けて私たちの体を守る免疫。今、その免疫を制御する
治療が、医療に革命的な変化をもたらそうとしている。異物を攻撃する免疫細胞の働きを、
部分的に制御する「免疫寛容(めんえきかんよう)」と呼ばれる治療方法だ。
前半は北海道大学の移植医療チームは、2年前から始めた新しい生体肝移植法で、
「免疫寛容」を実施。このたび世界で初めて、4名の患者の“免疫抑制剤ゼロ”を実現した。
この部分についてNHKの下記アドレスにて要約版を観ることが出来ます。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3325.html
免疫寛容に関する研究については下記の情報が有用です。
-マウスの経口免疫寛容の分子作用機構を世界で初めて証明-
独立行政法人理化学研究所 横浜研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター
樹状細胞機能研究チーム
チームリーダー 佐藤 克明(さとう かつあき)
Tel: 045-503-7013 / Fax: 045-503-7013
詳細は下記サイト
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2010/100930/detail.html
この番組で一番興味をそそったのは食物アレルギー等に効果のある物質
「アルファ・ギャルセル」である。
アルファ・ギャルセルとはフルスペルでα-galactosylceramide のことで
そのスペルの前半と後半の略をとりα-GalCerという略語を作ったのが語源です。
KRN7000とか7DW8-5という商品名でフナコシ(旧:フナコシ薬品)から販売されて
います。
アルファ・ギャルセルの代名詞的な存在になっているKRN7000について少し解説しておく。
出典:http://www.alpha-galcer.net/
協和発酵キリン株式会社より研究用試薬としてフナコシにライセンスされたもので、
臨床用途には使用できません。
沖縄に生息する海綿の一種Agelas mauritianusから抽出・分離されたスフィンゴ糖脂質で,
その抗腫瘍活性が注目されています。
KRN7000は,B16腫瘍細胞を移植したマウスに対する延命効果を指標にしたin vivo
スクリーニングにおいて,その脂溶性画分が顕著な延命効果(抗腫瘍活性)を
示したことから,化学構造が決定されました。さらに,抗原提示細胞(樹状細胞)上に
発現するCD1dによりナチュラルキラーT 細胞(NKT 細胞)へ提示され,さまざまな
免疫反応を賦活することが明らかになっています。また,多くの腫瘍において,
強力な抗腫瘍活性が見出され,学術的にも大変注目されています。
•化学名:(2S, 3S, 4R)-1-O-(α-D-galactosyl)-N-hexacosanoyl-2-amino-1, 3, 4-octadecanetriol
•分子式:C50H99NO9
•分子量 M.W.:858.34
•DMSOに可溶
詳細は下記サイトを参照してください。
http://www.alpha-galcer.net/
http://www.funakoshi.co.jp/contents/1195
また、同じ上記のサイトにおいてアルファ・ギャルセルのKRN7000は下記の分野に
応用できると記載されています。
1)薬剤の補助材(Adjuvants) 2)AIDS 3)ぜんそく(Asthma)
4)ガン(Cancer) 5)抗原提示細胞(樹状細胞) Dendritic
6)糖尿病(Diabetes) 7)日本における研究(Japan Research)
8)白血病(Leukemia) 9)肝臓病(Liver) 10)分子生物学(Microbiology)
7DW8-5についての化学名などを記しておきます。
出典:http://www.alpha-galcer.net/7DW8-5.html
化学名:[(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-galactopyranosyl)-N-(11-(4-fluorophenyl)undecanoyl)-2-amino-1,3,4-octadecanetriol)]
分子式:C41H72FNO9
上記のフナコシ以外にアルファ・ギャルセルを提供している企業はライフサイエンスの
ENZOのAnalog8があります。
出典:http://www.enzolifesciences.com/ALX-306-033/alpha-galcer-analog-8/
慣用化学名 Alternative Name: α-Galactosylceramide Analog 8
分子式 Formula: C50H97N3O8
分子量 MW: 868.32
ソース Source:合成品 Synthetic
NHKの番組の後半部で理化学研究所横浜研究所ワクチンデザイン研究チームの石井保之
(いしいやすゆき)さんはアルファ・ギャルセルという物質の研究内容の紹介を
されていました。石井さんが卵アレルギーのマウスにアルファ・ギャルセルと
卵を混ぜ合わせたものを与えたところ、アレルギーが治ったのです。
アルファ・ギャルセルと卵を混ぜたものは攻撃を指令している免疫細胞に張り付きます。
そして卵は敵ではないと教え込むのです。この体内での教育の結果、免疫細胞による
攻撃はとまりアレルギーが治ります。
このような技術を応用して花粉症に効く治療薬の開発の可能性も期待されています。
石井保之氏の公開特許を列記しておきます。
1)特許公開2011-84559 改変融合タンパク質 【課題】スギ花粉症の治療及び予防に用いられ得る物質、特に、生体内で
アナフィラキシー反応を誘発し得ず、アレルギー性疾患患者におけるエピトープ
をカバーし得、及び/又は高純度での大量生産が容易であり得る、スギ花粉症の
治療及び予防に用いられ得る物質の提供。
【解決手段】Cry j1とCry j2の融合タンパク質のシステイン残基が1個を除いて全て
PEG化修飾を受けないアミノ酸残基に置換され、かつ、1個のシステイン残基が、
分子量12kDa~100kDaのポリエチレングリコール(PEG)でPEG化修飾されて
いることを特徴とする、PEG化改変融合タンパク質。
2)特許公開2009-14626 BCGによる治療効果の予測方法
【課題】 BCGの接種前にBCG接種の効果を予測する方法、およびかかる予測に
基づいてアレルギー疾患へのBCGによる治療方法を提供すること。
【解決手段】 アレルギー疾患を有する被験者について、アレルギー疾患の治療に
対するBCG接種の効果を予測する方法であって、アレルゲンへの暴露により被験者
のIgE産生が促進されるかどうかを測定または推定し、これを指標としてBCG
接種の効果を予測することを特徴とする方法が開示される。本発明は、アレルギー
疾患の患者の集団の中に、アレルゲンへの暴露によってIgE産生が促進される集団
とアレルゲンへの暴露によってIgE産生が促進されない集団との両方が存在する
こと、およびアレルゲンへの暴露によってIgE産生が促進されない患者では、
BCG接種によるIgE産生抑制効果が低いことの発見に基づく。
3)特許公開2008-73031
組換えスギ花粉抗原融合遺伝子と可溶性産物の製造方法
4)特許公開2007-22930
樹状細胞機能変換剤および変換方法
5)特許公開平8-149981
T細胞α鎖による抗原特異的免疫制御の方法
6)WO2011/027810
アレルゲン特異的リンパ球の検出方法
7)WO2009/139378
イヌ又はヒトの抗原特異的IgEを定量する方法
8)WO2009/116524
改変タンパク質
9)WO2007/080977
免疫疾患の予防ないし治療剤および方法
10)WO2007/069423
アレルギー診断用マーカー
11)WO2005/120574
調節性細胞リガンドをリポソームに含有させてなる医薬
12)WO2004/087917
チオレドキシン改変体
13)WO00/078804
免疫応答抑制タンパク質
時間がなくて中途半端なまとめとなってしまいました。