2013年 05月 01日
神戸大学医学部が新規抗がん剤候補物質を発見 |
2013年4月30日のNHKニュースで標題のニュースを報じていました。
また神戸新聞1面の記事でも標題の内容を報じています。神戸大学からの記者発表
資料をベースとして内容を整理してみる。
神戸大学の記者発表資料
http://www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2013_04_30_01.html
1.発表内容概要
神戸大学大学院医学研究科の片岡徹教授、島扶美准教授らのグループは大腸がんや膵臓がん
をはじめとする多くのがん発症に関わるrasがん遺伝子が作り出す蛋白質 (Ras) の働きを
止める抗がん剤開発候補物質の同定に成功しました。
この研究成果は4月29日の週に米国科学アカデミー紀要に掲載される予定です。
Rasを作り出す遺伝子が突然変異している場合、Rasは他のタンパク質とくっつき、
細胞をがん化させる信号を伝達するようになる。グループによると、がん全体の原因の
約2割はこのケースで、大腸、膵臓がんで割合が特に高い。

上の写真はNHKの2013-4-30のお昼のニュースより記者発表会の様子です。

上の写真は同じくNHKニュースからでがんの原因となる遺伝子を作るタンパク質
RAS(らす)のX線結晶構造解析で解明されたRASたんぱくの構造模式図。
構造解析は理化学研究所 (SPring-8) 所属の熊坂崇先生が協力された。

RASは作り出す遺伝子に異常があればがん細胞を増殖させる。

上の写真はがんを増殖させるシグナルがONになる条件。
GTP型RASに分子標的たんぱく質(Rafなど)が結合によりシグナルがONとなる。

上の写真はがんを増殖させるシグナルがOFFになる条件。
結合阻害剤が入るとはがんを増殖させるシグナルがOFFになる。


今回発見された3つの阻害剤(Kobe0065、Kobe2601、Kobe2602)を
使用してマウスでがん増殖阻止効果を確認した結果その有効性を確認できた。
上記のRASの詳細な構造解析の結果、
Rasの分子表面上に世界で初めてとなるポケット構造(鍵穴)を発見し、
このポケット構造情報に基づき、コンピュータシミュレーションを駆使して、
ポケットに特異的に結合することにより、Rasとその標的たんぱく質
(Rafたんぱく質など) との結合を阻害することで、Rasが引き起こす細胞がん化
シグナルの伝達を遮断する3種類の物質 (低分子化合物) を、
コンピュータシミュレーションと試験管内及び細胞レベルでの活性検定を
組み合わせた独自の手法を用いることで発見した。
これらの物質 (論文中で「Kobeファミリー化合物」と命名) は共通の基本構造を
持ち、マウスに移植したヒト大腸がん細胞の腫瘍形成を抑制する
顕著な抗がん作用を示した。

上の写真は神戸新聞(2013-4-30 1面)からとったもので上述したがん化の
シグナルがON、OFFする機構を簡明に表現されています。
Kobeファミリー化合物は共通の母核 (基本) 構造を有するが、特許調査上はがん治療薬
としての登録は全くない。神戸大学としては、これらの物質を
新規がん治療薬開発候補として (Ras阻害物質のスクリーニング方法も含めて)
2011年に国内特許出願を果たし、近々米国出願予定にある。
国際出願(PCT出願)特許の内容は下記のとおり。
国際出願番号 : PCT/JP2010/061821 国際出願日 : 2010年7月13日
国際公開番号 : WO2011/007773 国際公開日 : 2011年1月20日
【出願番号】 特許出願2011-522813
【優先権主張番号】 特願2009-165717(P2009-165717)
【優先日】 平成21年7月14日(2009.7.14)
【発明の名称】 変異型Rasポリペプチドの結晶
【発明者】
【氏名】 片岡 徹 【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 島 扶美 【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 田村 厚夫【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 熊坂 崇 【住所又は居所】 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1番1号 財団法人高輝度光科学研究センター内
【要約】
本発明は、Rasの分子表面にポケットを有する立体構造をとるようなRasポリペプチドとGTPもしくはGTPアナログとの共結晶、該結晶の作製方法、および、該結晶を用いたX線結晶構造解析による立体構造情報に基づきRas機能阻害物質をスクリーニングする方法を提供することを課題とする。かかる課題は、Rasにおいて分子表面にポケットを有する立体構造をとるような変異に着目し、かかる変異を導入した変異型Rasポリペプチドを取得し、当該変異型RasポリペプチドとGTPアナログとの共結晶を作製し、さらに当該共結晶についてX線結晶構造解析を行うことにより、ポケット周辺を含む立体構造情報を明らかにしたことにより解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rasの部分ポリペプチドにおいて、switch I領域近傍を含む部位に1残基以上のアミノ酸の置換が導入され、当該変異の導入により分子表面にポケットを有する立体構造をとる変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶。
【請求項2】
変異型Rasポリペプチドが、以下の1)または2)のポリペプチドである、請求項1に記載の共結晶:
1)前記部分ポリペプチドが、配列番号1に示す1番目~166番目のアミノ酸残基からなるH-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号1に示すアミノ酸配列の35番目のスレオニンがセリンに置換されているポリペプチド;
2)前記部分ポリペプチドが、配列番号2に示す1番目~178番目のアミノ酸残基からなるM-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号2に示すアミノ酸配列の40番目のプロリンがアスパラギン酸に置換されているポリペプチド。
【請求項3】
結晶の空間群がR32、I222またはC2であり、格子定数がa=30~100Å、b=60~100Å、c=70~125Å、α=90°、β=90~100°、γ=90~120°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項4】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、結晶の空間群がR32であり、格子定数がa=b=91.81~95.20Å、c=116.13~121.97Å、α=β=90°、γ=120°である、請求項2または3に記載の共結晶。
【請求項5】
格子定数がa=94.20Å、b=94.20Å、c=120.97Å、α=β=90.00°、γ=120.00°である、請求項4に記載の共結晶。
【請求項6】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、結晶の空間群がI222であり、格子定数がa=34.28~34.88Å、b=81.20~82.80Å、c=120.80~123.20Å、α=β=γ=90°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項7】
格子定数がa=34.58Å、b=82.00Å、c=122.00Å、α=β=γ=90°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項8】
変異型Rasポリペプチドが前記2)のポリペプチドであり、結晶の空間群がC2であり、格子定数がa=33.12~34.04Å、b=64.69~66.33Å、c=72.67~74.93Å、α=γ=90°、β=94.92~95.33°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項9】
格子定数がa=33.72Å、b=65.70Å、c=74.08Å、α=γ=90.00°、β=95.02°である、請求項8に記載の共結晶。
【請求項10】
Rasの部分ポリペプチドにおいて、switch I領域近傍を含む部位に1残基以上のアミノ酸の置換が導入され、当該変異の導入により分子表面にポケットを有する立体構造をとる変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶を作製する方法。
【請求項11】
変異型Rasポリペプチドが以下の1)または2)のポリペプチドである、請求項10に記載の作製方法:
1)前記部分ポリペプチドが、配列番号1に示す1番目~166番目のアミノ酸残基からなるH-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号1に示すアミノ酸配列の35番目のスレオニンがセリンに置換されているポリペプチド;
2)前記部分ポリペプチドが、配列番号2に示す1番目~178番目のアミノ酸残基からなるM-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号2に示すアミノ酸配列の40番目のプロリンがアスパラギン酸に置換されているポリペプチド。
【請求項12】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、前記Rasタンパク質を含む溶液を、硫酸アンモニウムまたは分子量が2000~5000のポリエチレングリコールを含む沈殿剤溶液を用いて蒸気拡散法により結晶化する工程を含む、請求項11に記載の作製方法。
【請求項13】
変異型Rasポリペプチドが前記2)のポリペプチドであり、前記Rasタンパク質を含む溶液を、平均分子量が1000~2000のポリエチレングリコールを含む沈殿剤溶液を用いて蒸気拡散法により結晶化する工程を含む、請求項12に記載の作製方法。
【請求項14】
以下の工程を含むRas機能阻害物質をスクリーニングする方法:
(1)請求項1~9のいずれか1項に記載の共結晶から得られた立体構造情報を用いて、ポケットに結合する候補化合物を設計または選択する工程、
(2)前記設計または選択された候補化合物を、合成または取得する工程、
(3)前記候補化合物によるRasの機能阻害活性を調べるために、前記候補化合物とRasとを接触させる工程。
【請求項15】
以下の工程を含むRas機能阻害物質をスクリーニングする方法:
(1)請求項10~13のいずれか1項に記載の方法により、変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶を作製する工程、
(2)結晶化された当該ポリペプチドの構造を、X線結晶構造解析により解き、当該ポリペプチドの立体構造情報を得る工程、
(3)得られた立体構造情報を用いて、ポケットに結合する候補化合物を設計または選択する工程、
(4)前記設計または選択された候補化合物を、合成または取得する工程、
(5)前記候補化合物によるRasの機能阻害活性を調べるために、前記候補化合物とRasとを接触させる工程。
Ras阻害物質の探索・開発研究については、ロッシュ社の系列のジェネンテック社や
アボット社など世界的にも有名な製薬企業においても精力的に行われており、
最近になって彼らの研究成果がPNASをはじめとする有名科学雑誌に掲載されはじめて
いるため、研究競争激化の様相を呈し始めている。
しかし、我々の開発物質は、論文等で開示されている競争相手のRas機能阻害物質とは
作用機序が異なり、生化学・細胞生物学的活性は彼らのそれと比較して非常に強く、
彼らの化合物が持たない動物レベルでの腫瘍増殖抑制効果を示すことから、
神戸大学の研究は現時点で彼らよりは先を走っていると考えられる。
阻害剤開発の現状と世界的背景

近年、がん遺伝子が作り出すたんぱく質の機能を特異的に阻害することにより
がん細胞の増殖を抑制するがん治療薬 (分子標的薬) が複数開発され、
イマチニブなどのいくつかのものは臨床の現場で画期的な治療効果を上げている。
しかし、これらは限られたがん (イマチニブ: 慢性骨髄性白血病) にのみ有効であり、
広い範囲のがんの治療に有効なものはない。
今回、ポケット構造(鍵穴)が見つかったことで研究が加速し、ガン治療薬として早く
人間への臨床試験、毒性確認、法的手続きなど出来る限り速いスピードで実施して
画期的ながん治療薬が早期に登場することを期待したい。
関連の研究論文
J Biol Chem. 2011 Nov 11;286(45):39644-53. doi: 10.1074/jbc.M111.227074. Epub 2011 Sep 19.
Solution structure of the state 1 conformer of GTP-bound H-Ras protein and distinct dynamic properties between the state 1 and state 2 conformers.
また神戸新聞1面の記事でも標題の内容を報じています。神戸大学からの記者発表
資料をベースとして内容を整理してみる。
神戸大学の記者発表資料
http://www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2013_04_30_01.html
1.発表内容概要
神戸大学大学院医学研究科の片岡徹教授、島扶美准教授らのグループは大腸がんや膵臓がん
をはじめとする多くのがん発症に関わるrasがん遺伝子が作り出す蛋白質 (Ras) の働きを
止める抗がん剤開発候補物質の同定に成功しました。
この研究成果は4月29日の週に米国科学アカデミー紀要に掲載される予定です。
Rasを作り出す遺伝子が突然変異している場合、Rasは他のタンパク質とくっつき、
細胞をがん化させる信号を伝達するようになる。グループによると、がん全体の原因の
約2割はこのケースで、大腸、膵臓がんで割合が特に高い。

上の写真はNHKの2013-4-30のお昼のニュースより記者発表会の様子です。

上の写真は同じくNHKニュースからでがんの原因となる遺伝子を作るタンパク質
RAS(らす)のX線結晶構造解析で解明されたRASたんぱくの構造模式図。
構造解析は理化学研究所 (SPring-8) 所属の熊坂崇先生が協力された。

RASは作り出す遺伝子に異常があればがん細胞を増殖させる。

上の写真はがんを増殖させるシグナルがONになる条件。
GTP型RASに分子標的たんぱく質(Rafなど)が結合によりシグナルがONとなる。

上の写真はがんを増殖させるシグナルがOFFになる条件。
結合阻害剤が入るとはがんを増殖させるシグナルがOFFになる。


今回発見された3つの阻害剤(Kobe0065、Kobe2601、Kobe2602)を
使用してマウスでがん増殖阻止効果を確認した結果その有効性を確認できた。
上記のRASの詳細な構造解析の結果、
Rasの分子表面上に世界で初めてとなるポケット構造(鍵穴)を発見し、
このポケット構造情報に基づき、コンピュータシミュレーションを駆使して、
ポケットに特異的に結合することにより、Rasとその標的たんぱく質
(Rafたんぱく質など) との結合を阻害することで、Rasが引き起こす細胞がん化
シグナルの伝達を遮断する3種類の物質 (低分子化合物) を、
コンピュータシミュレーションと試験管内及び細胞レベルでの活性検定を
組み合わせた独自の手法を用いることで発見した。
これらの物質 (論文中で「Kobeファミリー化合物」と命名) は共通の基本構造を
持ち、マウスに移植したヒト大腸がん細胞の腫瘍形成を抑制する
顕著な抗がん作用を示した。

上の写真は神戸新聞(2013-4-30 1面)からとったもので上述したがん化の
シグナルがON、OFFする機構を簡明に表現されています。
Kobeファミリー化合物は共通の母核 (基本) 構造を有するが、特許調査上はがん治療薬
としての登録は全くない。神戸大学としては、これらの物質を
新規がん治療薬開発候補として (Ras阻害物質のスクリーニング方法も含めて)
2011年に国内特許出願を果たし、近々米国出願予定にある。
国際出願(PCT出願)特許の内容は下記のとおり。
国際出願番号 : PCT/JP2010/061821 国際出願日 : 2010年7月13日
国際公開番号 : WO2011/007773 国際公開日 : 2011年1月20日
【出願番号】 特許出願2011-522813
【優先権主張番号】 特願2009-165717(P2009-165717)
【優先日】 平成21年7月14日(2009.7.14)
【発明の名称】 変異型Rasポリペプチドの結晶
【発明者】
【氏名】 片岡 徹 【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 島 扶美 【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 田村 厚夫【住所又は居所】 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 国立大学法人神戸大学内
【氏名】 熊坂 崇 【住所又は居所】 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1番1号 財団法人高輝度光科学研究センター内
【要約】
本発明は、Rasの分子表面にポケットを有する立体構造をとるようなRasポリペプチドとGTPもしくはGTPアナログとの共結晶、該結晶の作製方法、および、該結晶を用いたX線結晶構造解析による立体構造情報に基づきRas機能阻害物質をスクリーニングする方法を提供することを課題とする。かかる課題は、Rasにおいて分子表面にポケットを有する立体構造をとるような変異に着目し、かかる変異を導入した変異型Rasポリペプチドを取得し、当該変異型RasポリペプチドとGTPアナログとの共結晶を作製し、さらに当該共結晶についてX線結晶構造解析を行うことにより、ポケット周辺を含む立体構造情報を明らかにしたことにより解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rasの部分ポリペプチドにおいて、switch I領域近傍を含む部位に1残基以上のアミノ酸の置換が導入され、当該変異の導入により分子表面にポケットを有する立体構造をとる変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶。
【請求項2】
変異型Rasポリペプチドが、以下の1)または2)のポリペプチドである、請求項1に記載の共結晶:
1)前記部分ポリペプチドが、配列番号1に示す1番目~166番目のアミノ酸残基からなるH-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号1に示すアミノ酸配列の35番目のスレオニンがセリンに置換されているポリペプチド;
2)前記部分ポリペプチドが、配列番号2に示す1番目~178番目のアミノ酸残基からなるM-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号2に示すアミノ酸配列の40番目のプロリンがアスパラギン酸に置換されているポリペプチド。
【請求項3】
結晶の空間群がR32、I222またはC2であり、格子定数がa=30~100Å、b=60~100Å、c=70~125Å、α=90°、β=90~100°、γ=90~120°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項4】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、結晶の空間群がR32であり、格子定数がa=b=91.81~95.20Å、c=116.13~121.97Å、α=β=90°、γ=120°である、請求項2または3に記載の共結晶。
【請求項5】
格子定数がa=94.20Å、b=94.20Å、c=120.97Å、α=β=90.00°、γ=120.00°である、請求項4に記載の共結晶。
【請求項6】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、結晶の空間群がI222であり、格子定数がa=34.28~34.88Å、b=81.20~82.80Å、c=120.80~123.20Å、α=β=γ=90°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項7】
格子定数がa=34.58Å、b=82.00Å、c=122.00Å、α=β=γ=90°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項8】
変異型Rasポリペプチドが前記2)のポリペプチドであり、結晶の空間群がC2であり、格子定数がa=33.12~34.04Å、b=64.69~66.33Å、c=72.67~74.93Å、α=γ=90°、β=94.92~95.33°である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項9】
格子定数がa=33.72Å、b=65.70Å、c=74.08Å、α=γ=90.00°、β=95.02°である、請求項8に記載の共結晶。
【請求項10】
Rasの部分ポリペプチドにおいて、switch I領域近傍を含む部位に1残基以上のアミノ酸の置換が導入され、当該変異の導入により分子表面にポケットを有する立体構造をとる変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶を作製する方法。
【請求項11】
変異型Rasポリペプチドが以下の1)または2)のポリペプチドである、請求項10に記載の作製方法:
1)前記部分ポリペプチドが、配列番号1に示す1番目~166番目のアミノ酸残基からなるH-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号1に示すアミノ酸配列の35番目のスレオニンがセリンに置換されているポリペプチド;
2)前記部分ポリペプチドが、配列番号2に示す1番目~178番目のアミノ酸残基からなるM-Rasの部分ポリペプチドであり、前記変異が配列番号2に示すアミノ酸配列の40番目のプロリンがアスパラギン酸に置換されているポリペプチド。
【請求項12】
変異型Rasポリペプチドが前記1)のポリペプチドであり、前記Rasタンパク質を含む溶液を、硫酸アンモニウムまたは分子量が2000~5000のポリエチレングリコールを含む沈殿剤溶液を用いて蒸気拡散法により結晶化する工程を含む、請求項11に記載の作製方法。
【請求項13】
変異型Rasポリペプチドが前記2)のポリペプチドであり、前記Rasタンパク質を含む溶液を、平均分子量が1000~2000のポリエチレングリコールを含む沈殿剤溶液を用いて蒸気拡散法により結晶化する工程を含む、請求項12に記載の作製方法。
【請求項14】
以下の工程を含むRas機能阻害物質をスクリーニングする方法:
(1)請求項1~9のいずれか1項に記載の共結晶から得られた立体構造情報を用いて、ポケットに結合する候補化合物を設計または選択する工程、
(2)前記設計または選択された候補化合物を、合成または取得する工程、
(3)前記候補化合物によるRasの機能阻害活性を調べるために、前記候補化合物とRasとを接触させる工程。
【請求項15】
以下の工程を含むRas機能阻害物質をスクリーニングする方法:
(1)請求項10~13のいずれか1項に記載の方法により、変異型RasポリペプチドとGTPまたはGTPアナログとの共結晶を作製する工程、
(2)結晶化された当該ポリペプチドの構造を、X線結晶構造解析により解き、当該ポリペプチドの立体構造情報を得る工程、
(3)得られた立体構造情報を用いて、ポケットに結合する候補化合物を設計または選択する工程、
(4)前記設計または選択された候補化合物を、合成または取得する工程、
(5)前記候補化合物によるRasの機能阻害活性を調べるために、前記候補化合物とRasとを接触させる工程。
Ras阻害物質の探索・開発研究については、ロッシュ社の系列のジェネンテック社や
アボット社など世界的にも有名な製薬企業においても精力的に行われており、
最近になって彼らの研究成果がPNASをはじめとする有名科学雑誌に掲載されはじめて
いるため、研究競争激化の様相を呈し始めている。
しかし、我々の開発物質は、論文等で開示されている競争相手のRas機能阻害物質とは
作用機序が異なり、生化学・細胞生物学的活性は彼らのそれと比較して非常に強く、
彼らの化合物が持たない動物レベルでの腫瘍増殖抑制効果を示すことから、
神戸大学の研究は現時点で彼らよりは先を走っていると考えられる。
阻害剤開発の現状と世界的背景

近年、がん遺伝子が作り出すたんぱく質の機能を特異的に阻害することにより
がん細胞の増殖を抑制するがん治療薬 (分子標的薬) が複数開発され、
イマチニブなどのいくつかのものは臨床の現場で画期的な治療効果を上げている。
しかし、これらは限られたがん (イマチニブ: 慢性骨髄性白血病) にのみ有効であり、
広い範囲のがんの治療に有効なものはない。
今回、ポケット構造(鍵穴)が見つかったことで研究が加速し、ガン治療薬として早く
人間への臨床試験、毒性確認、法的手続きなど出来る限り速いスピードで実施して
画期的ながん治療薬が早期に登場することを期待したい。
関連の研究論文
J Biol Chem. 2011 Nov 11;286(45):39644-53. doi: 10.1074/jbc.M111.227074. Epub 2011 Sep 19.
Solution structure of the state 1 conformer of GTP-bound H-Ras protein and distinct dynamic properties between the state 1 and state 2 conformers.
by seiyo39
| 2013-05-01 11:30
| その他
|
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