食中毒菌の24標的遺伝子を一斉検出するためのMultiplexリアルタイムSYBR Green PCR法 |
おいて表題の内容について紹介されていました。
NHKの報道内容要旨は下記のとおりです。
島根・松江の島根県保健環境科学研究所が、食中毒の原因菌を素早く調べる技術を開発した。
この技術で検査にかかる時間は3時間。これまでは菌の培養をしていたため、検査に3日以上
かかっていた。
検査に時間がかかれば、感染拡大の可能性が増え、食中毒の原因の特定が困難になる。
福島博さんは「迅速に結果を出し。住民を案安心させる」と述べた。
菌を特定するには一定量まで増やす必要があるが、菌そのものを増やす培養には3日以上
の時間を要する。一方DNAは3時間で増やすことができる。新しい技術は、早いだけでなく、
サルモネラ菌など、原因菌のすべてを一度に検査できる。福島博さんは「24種類の原因菌は
ほぼ網羅的にカバーしているので、たまにしか発生しない菌でも簡単に検出できる」と語った。
2013年5月に特許を取得。福島博さんは「全国に普及してもらうためには製品化して
出さなければ使ってもらえない」と示した。
5つの道県に協力してもらいデータを集め、信頼性を高める実験が続いている。
特許の内容及び関連情報を含めて紹介します。
(1)島根県出願 発明者:福島博氏 の特許 5267293号について
リアルタイムPCR法による食品媒介病原菌の網羅的迅速検出方法
特開2010-246419 (平22.11.4) 出願番号:特許 2009-096633 (平21.4.13)
特許登録 5267293 (平25.5.17) 出願人:島根県
発明者:福島博 島根県松江市西浜佐陀町582番地1 島根県保健環境科学研究所内
【解決手段】複数種類の食品媒介病原菌それぞれにおける所定の検出用DNA断片を
増幅させるプライマーペアの組であって、検出用DNA断片のTm値が互いに異なるように
設計されたプライマーペアの組、および、蛍光インターカレータを、プレートないし
チューブセットのそれぞれの穴に分注し、さらに、前記検出用DNA断片を1穴に1種類ずつ
種類数分添加し、残余の穴には被験者の糞便液から抽出した鋳型DNAを1穴に1人分ずつ
人数分添加し、これをリアルタイムPCRによって増幅させた後、融解曲線分析をおこない、
被験者に一定量を超えていずれかの食中毒菌の保有が認められるかをスクリーニング
することを特徴とする食品媒介病原菌検査方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2008-48670号公報
【特許文献2】特開2007-274934号公報
【非特許文献1】Hiroshi Fukushima, et al, 'Duplex Real Time SYBR Green PCR Assaysfor Detection of 17 Species of Food- or Waterborne Patholgens in Stools' Journal of Clinical Microbiology,Vol.41, No.11, (2003)
【非特許文献2】福島博ら「リアルタイムPCR法による食中毒菌の迅速スクリーニングの検討」感染症学雑誌、第79巻 第9号 (平成17年)
【非特許文献3】Haukur Gudnason1, et al, 'Comparison of multiple DNA dyes forreal-time PCR: effects of dye concentration and sequence composition on DNAamplification and melting temperature' Nucleic Acids Research, Vol. 35, No. 19, (2007)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の食品媒介病原菌それぞれにおける所定の検出用DNA断片を増幅させる
プライマーペアの組であって、検出用DNA断片のTm値が互いに異なるように設計された
プライマーペアの組、および、蛍光インターカレータを、プレートないしチューブセットの
それぞれの穴に分注し、さらに、前記検出用DNA断片を1穴に1種類ずつ種類数分添加し、
残余の穴には被験者の糞便液から抽出した鋳型DNAを1穴に1人分ずつ人数分添加し、
これをリアルタイムPCRによって増幅させた後、融解曲線分析をおこない、被験者に一定量
を超えていずれかの食品媒介病原菌の保有が認められるかをスクリーニングすることを
特徴とする食品媒介病原菌検査方法。
【請求項2】
プライマーペアの組と蛍光インターカレータに加えて、 前記検出用DNA断片のいずれの
Tm値とも異なるTm値をもつDNA断片を有するインターナルコントロールと、当該DNA断片
を増幅させるインターナルコントロール用プライマーペアと、をプレートないしチューブセットの
それぞれの穴に分注したことを特徴とする請求項1に記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項3】
前記検出用DNA断片と前記鋳型DNAのいずれをも含まず、前記プライマーペアの組、
前記蛍光インターカレータ、前記インターナルコントロール用プライマーペア、および、調整水、
または、前記プライマーペアの組、前記蛍光インターカレータ、前記インターナルコントロール
用プライマーペア、および、前記インターナルコントロールからなる液が分注された区を
プレートないしチューブセットに設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の食品媒介
病原菌検査方法。
【請求項4】
蛍光インターカレータが、サイバーグリーン、BEBO、YO-PRO-1、LC Green、
SYTO-9、SYTO-13、または、SYTO-82であることを特徴とする請求項1、2または
3に記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項5】
プレートないしチューブセットを区画し、プライマーペアの組を、発生頻度の高い第1の
食品媒介病原菌群から選んだ1種の特定の検出用DNA断片と、発生頻度が第1の食品媒介
病原菌よりは高くない第2の食品媒介病原菌群から選んだ1種または2種の食品媒介
病原菌の特定の検出用DNA断片と、をそれぞれ増幅させるように、かつ、食品媒介病原菌種
がそれぞれ重複しないように、グループ化し、 1区画1グループとなるように割り当てて
プライマーペアの組を分注し、各区画に前記割り当てられたグループに係る前記検出用
DNA断片を1穴に1種類ずつ種類数分添加し、各区画の残余の穴には被験者の糞便液から
抽出した鋳型DNAを1穴に1人分ずつ人数分添加したことを特徴とする請求項1~4の
いずれか一つに記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項6】
第1の食品媒介病原菌群は、耐熱性溶血毒産生腸炎ビブリオ、ウエルシュ菌、サルモネラ菌、
カンピロバクター・ジェジュニ、黄色ブドウ球菌、嘔吐毒産生セレウス菌、
eaeA遺伝子保有大腸菌、astA遺伝子保有大腸菌、から選ばれた群であり、
第2の食品媒介病原菌群は、カンピロバクター・コリー、aagR遺伝子保有大腸菌、
stx1遺伝子保有大腸菌、下痢毒産生セレウス菌、赤痢菌、コレラ菌、プロビデンシア・
アルカリファンシエンス、プレシオモナス・シゲロイデス、LT遺伝子保有大腸菌、リステア菌、
TRH産生腸炎ビブリオ、stx2遺伝子保有大腸菌、ST遺伝子保有大腸菌、エルシニア菌、
エロモナス菌、daaD遺伝子保有大腸菌、から選ばれた群であることを特徴とする請求項5
に記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項7】
グループ内の検出用DNA断片のTm値を互いに0.6℃以上離れるようにプライマーペアを
設計したことを特徴とする請求項5または6に記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項8】
食品媒介病原菌が、耐熱性溶血毒産生腸炎ビブリオである場合には、検出用DNA断片は
配列番号7に示すものであり、これに対するプライマーペアは配列番号31および32に
示すものであり、カンピロバクター・コリーである場合には、検出用DNA断片は配列番号8
に示すものであり、これに対するプライマーペアは配列番号33および34に示すものであり、
aagR遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号9に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号35および36に示すものであり、
ウエルシュ菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号10に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号37および38に示すものであり、
stx1遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号11に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号39および40に示すものであり、
下痢毒産生セレウス菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号12に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号41および42に示すものであり、
サルモネラ菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号13に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号43および44に示すものであり、
赤痢菌である場合には、検出用DNA断片は14であり、これに対するプライマーペアは
配列番号45および46に示すものであり、
コレラ菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号15に示すものであり、これに対する
プライマーペアは配列番号47および48であり、
カンピロバクター・ジェジュニである場合には、検出用DNA断片は配列番号16に示すもので
あり、これに対するプライマーペアは配列番号49および50に示すものであり、
プロビデンシア・アルカリファンシエンスである場合には、検出用DNA断片は配列番号17に
示すものであり、これに対するプライマーペアは配列番号51および52に示すものであり、
プレシオモナス・シゲロイデスである場合には、検出用DNA断片は配列番号18に示すもの
であり、これに対するプライマーペアは配列番号53および54に示すものであり、
黄色ブドウ球菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号19に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号55および56に示すものであり、
LT遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号20に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号57および58に示すものであり、
リステア菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号21に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号59および60に示すものに示すものであり、
嘔吐毒産生セレウス菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号22に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号61および62に示すものであり、
TRH産生腸炎ビブリオである場合には、検出用DNA断片は配列番号23に示すものに示す
ものであり、これに対するプライマーペアは配列番号63および64に示すものであり、
stx2遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号24に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号65および66に示すものであり、
eaeA遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号25に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号67および68に示すものであり、
ST遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号26に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号69および70に示すものであり、
エルシニア菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号27に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号71および72に示すものであり、
astA遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号28に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号73および74に示すものであり、
エロモナス菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号29に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号75および76に示すものであり、
daaD遺伝子保有大腸菌である場合には、検出用DNA断片は配列番号30に示すものであり、
これに対するプライマーペアは配列番号77および78に示すものであることを特徴とする
請求項5または6に記載の食品媒介病原菌検査方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の食品媒介病原菌検査方法における、
Yersinia ruckeriの16SrRNA遺伝子のインターナルコントロールとしての使用。
【請求項10】
融解曲線分析により食品媒介病原菌をスクリーニングするに際して使用する
プライマーペアの組であって、増幅させるDNA断片のTm値が互いに0.6℃以上
離れるように以下の群から選択した3ペア以上からなるプライマーペアの組。
配列番号31および32に示すプライマーペア、配列番号33および34に示すプライマーペア、
配列番号35および36に示すプライマーペア、配列番号37および38に示すプライマーペア、
配列番号39および40に示すプライマーペア、配列番号41および42に示すプライマーペア、
配列番号43および44に示すプライマーペア、配列番号45および46に示すプライマーペア、
配列番号47および48に示すプライマーペア、配列番号49および50に示すプライマーペア、
配列番号51および52に示すプライマーペア、配列番号53および54に示すプライマーペア、
配列番号55および56に示すプライマーペア、配列番号57および58に示すプライマーペア、
配列番号59および60に示すプライマーペア、配列番号61および62に示すプライマーペア、
配列番号63および64に示すプライマーペア、配列番号65および66に示すプライマーペア、
配列番号67および68に示すプライマーペア、配列番号69および70に示すプライマーペア、
配列番号71および72に示すプライマーペア、配列番号73および74に示すプライマーペア、
配列番号75および76に示すプライマーペア、配列番号77および78に示すプライマーペア
【請求項11】
食中毒罹患の疑いのある複数の被験者から食品媒介病原菌をスクリーニングするための
食品媒介病原菌スクリーニング用PCRプレートであって、
発生頻度の高い第1の食品媒介病原菌群から選んだ1種と発生頻度が第1の食品媒介病原菌
よりは高くない第2の食品媒介病原菌群から選んだ1種または2種により、食品媒介病原菌を
それぞれ重複しないように複数のグループに分け、プレートを区画して1区画1グループとなる
ように割り当て、プレートの各穴に、インターナルコントロールと、インターナルコントロール用
プライマーペアと、蛍光インターカレータと、を分注し、さらに、グループ内の食品媒介病原菌
それぞれの所定の検出用DNA断片を増幅させるプライマーペアの組であって、検出用DNA
断片のTm値が互いに異なるように設計されたプライマーペアの組を、当該グループに係る
区画にそれぞれ分注し、かつ、各区画に当該区画に割り当てられたグループに係る前記
検出用DNA断片を1穴に1種類ずつ種類数分添加し、当該区画の残余の穴には被験者の
糞便液から抽出した鋳型DNAを1穴に1人分ずつ人数分添加したことを特徴とする食品媒介
病原菌スクリーニング用PCRプレート。
上の写真はNHKの番組でも紹介されていた病原菌スクリーニング用PCRプレート。
1穴で3種類×8穴 24種の食中毒菌の有無を確認できる。
検体は7検体が最大
(2)素人向け又はマスコミ向けのやさしい解説をしたサイト
島根県保健環境科学研究所 川瀬 遵氏が作成のPDFファイル
島根県保健環境科学研究所所有のPCR装置は、ABI7500(ABI社)
PCR法とは酵素(DNAポリメラーゼ)により標的DNAを繰り返し複製し、定量できる量まで
増幅する方法(数百万倍まで増幅可能)
リアルタイムPCR法でインターカレーター法(SYBR Green Ⅰ)を採用
PCR法の内部増幅標準(IAC)は、Yersinia ruckeriの標的遺伝子
16SrRNA(アクセッション番号X75275を採用
PCR反応試薬(サイバーグリーン)はSYBR Premix Ex Taq II(タカラバイオ社製)
2013-6-18 島根県保健環境科学研究所からの記者発表
発明者の福島博氏「企業に働きかけ、技術の商品化を目指している」ことを強調されて
いました。
神戸市では神戸市環境保健研究所が担当部署となります。